16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「汐里……」
青ざめている私を心配して、晃が支えようとしてくれた。
……パシッ。
身体に触れられる寸前で、私は晃の手を払ってしまった。
「……ごめん」
詰まっている喉から、絞り出した声。彼と目を合わせられなくて、私はそのまま歩き去った。
まだ動悸がしている。
晃と同じ優しそうな人だったから、なおさら胸が痛い。
「おかえり、汐里」
深呼吸をして、自宅のドアを開けると、お母さんが笑顔で出迎えてくれた。
「今日は楽しかった? お腹すいたでしょう。パスタでも茹でて食べようか」
「う、うん。じゃあ、手洗ってくるね」
洗面所に向かい、滲んでいた涙を隠れて拭った。
晃と遊んだことも、そのお母さんと会ったことも、ぜんぶが罪悪感に変わっていって、たまらない気持ちになる。
『今日はありがとう』
観覧車の中で、まっすぐに伝えてくれた彼の顔が頭に浮かんだ。
なんで、晃なんだろう。
なんで私たちって、こんな関係にしかなれないんだろう。
ポケットから出ているストラップが不安定に揺れている。
私たちが重なることなんて、きっと天国よりも遠いことかもしれない。