16歳、きみと一生に一度の恋をする。
翌日。俺は大学医療センターにいた。本来なら四週間に一回程度の治療で済むはずだったのに、最近症状が頻繁に表れるので、早めに受診することにしたのだ。
いつものステロイドの点滴は前回から日があいていないこともあって、半分の一時間が終わった。
「感覚はどう?」
診察室に移動したあと、益川先生が俺の手足の具合を確認していた。
「痛さはないけど、突かれてる感触はあります」
そう答えると、先生は俺の太ももに当てていたボールペンを離した。
「晃くんの場合、言語や記憶障害の傾向はないけど、やっぱり運動障害の症状のほうが強く出るみたいだね」
症状が出るたびに部位が変わる人もいるらしいけれど、こうやって俺のように同じ箇所ばかりを繰り返す人もいる。
「……いつか歩けなくなったりしますか?」
「断言はできないけど、可能性はあるよ」
「そうなったら、車いすですか……?」
俺は小さな声で聞いた。
以前、この病院で行われている患者会に参加したことがある。
同じ経験を持つ人の話を聞くことで、気持ちが軽くなったり、快適に生活を送る知恵を得られるかもしれないと、先生からの勧めだった。
正直、乗り気じゃなかったけれど、一回くらいならとしぶしぶ参加すると、そこには自分と同じ病気の人たちがいた。
症状が千差万別のように、患者の年齢も様々で、みんなそれぞれ仕事をしていたり、家庭を持っていたりと、病気と向き合いながら生活をしていた。
みんな気軽に声をかけてきてくれたけれど、俺が患者会に参加したのはそれっきりだ。
車いすに乗っている人や言語が聞き取りにくい人を見ると、まるで将来の自分の姿を見せつけられているようで逃げたくなった。