16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「再発期間が長引けばもちろん車いすに頼ることも必要になってくるよ。抵抗がある?」
「はい」
先生の質問に、素直に答えた。
「リハビリはね、もちろん日常生活に戻るための練習でもあるけど、症状が出ても乗り越えられるようにって意味もあるんだよ。精神力を鍛える、なんて言葉で言えば簡単に思えるけど、患者さんには必要なことだよ」
「……俺がこの先、大人になって家を離れたり、仕事をしたり……好きな人と一緒になることは可能なんでしょうか」
「もちろん」
先生の返事とは裏腹に、俺は前向きに捉えることはできない。
早く大人になって、一人立ちをして、誰の負担にもならずに生きたいのに、俺は頼らなければいけないことが多くなってくる。
まるでそういう病気を神様から宿題として出されている気分だ。
「少しずつ車いすの練習をしてみるかい?」
「………」
「自分が乗っている姿を想像するのと、実際に乗って動かしてみるのとでは全然違うよ」
いずれ必要になるからこそ、心構えがいる。
俺はまだそこまでじゃないと。そんなにひどくはないし、これ以上悪化はしないかもしれないという願望でここまで来てしまった。
けれど、ずっと避けていた未来に俺はもういるのかもしれない。
「……考えておきます」
絞り出すように返事をしたあと、俺は診察室を出た。