16歳、きみと一生に一度の恋をする。
これからどんどん病気が進行していったら、自分ができることの範囲は狭くなってくる。
色んなことを天秤にかけて、優先するものと諦めるものを選ぶ回数も増えてくるだろう。
と、その時。部室棟の外で話し声が聞こえてきた。どうやら通りかかった生徒のようだった。
「そういえばこの部室棟って来年に取り壊されるらしいよ。それで園芸部が使う花壇にするんだって」
「へえ、そうなんだ」
ふたつの声が小さくなると、足音も遠退いていった。
「……取り壊されちゃうんだ」
話を聞いていた汐里が残念そうな声を出した。
きっと時間の流れとともに、たくさんのことが変わっていく。俺はその変化に追いつけなくなる時がくるかもしれない。
でもせめて汐里だけは、自分のやりたいことをやって、笑っていてほしい。
それが今の俺の夢だ。