16歳、きみと一生に一度の恋をする。
父への怒りなのか、それとも悔しさなのか、写真は何度も見ていたことがわかるほど、くしゃくしゃになっている。
『ねえ、好きな人ができたから離婚してほしいなんて、なにかの冗談よね?』
ふたりが毎晩話し合いの末に、言い争っていた光景がよみがってきた。
『冗談じゃないよ。ずっと考えてたことなんだ』
『そんなこと私はなんにも知らないわ! 汐里もいるのに、自分がなにを言ってるかわかってるの?』
『わかってる』
『……っ、なにがわかってるのよ!!』
お母さんが投げたリモコンがお父さんの顔に当たる。
『私がどれだけあなたに尽くしてきたと思ってるの?』
『……そういうのが重かったんだよ。お前は俺のためにってあれこれしてくれたけど、結局尽くすことで自分が気持ちよくなってただけじゃないか』
『……じゃあ、なによ。あなたが浮気して他に好きな人を作ったのは私のせいだって言うの?』
お母さんの悲しそうな顔を、お父さんは見ようとしない。それさえも息苦しいと感じているかのように。