16歳、きみと一生に一度の恋をする。
入院生活はひとまず二週間で終わることになった。
そして、退院を控えた前日。俺は明日のために持ち帰る荷物を整理していた。
症状はなんとか落ち着いて、自分の足で歩けるようになった。と言っても一時的に過ぎないことはわかっている。
明日は学校の終業式だけど、退院できるのは午前の検診が終わったあとなので、俺は参加しない。
べつに必要ないけれど、二学期の通知表は家に送られてくる予定になっているそうだ。
「明日、益川先生は学会で留守のようだから、一日早いけどお礼を伝えてくるよ」
今日は一彦さんと母さんが揃って病院に来ていた。
あれから一彦さんはなにも言わない。もちろん俺が言ったことを母さんに伝えている気配も感じられない。
俺と汐里が知り合いってだけでも普通は驚くのに、さらに彼女に対して特別な感情を持っているなんて聞かされたら……。
きっと言葉にできないほど動揺したことだろう。
俺も打ち明けるつもりなんてなかった。
でも、もう気持ちが限界だった。
「あのさ、ふたりに話があるんだけど」
俺は両親に問いかけた。
手には先日、先生からもらっていた難病医療センターのパンフレットを持っていた。
自分の未来なんてちっとも想像できない。
だけど、このままくすぶっているわけにもいかない。
俺は自分の足で歩いていくために、大きな決断をしようとしていた。