16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「ほら、これ、晃の荷物」
玄関まで荷物を運んでくれていた一彦さんからボストンバッグを受け取った。
「日当たりもいいし、いい場所だね」
「うん」
俺の家と比べると部屋数も少なくなったのに、動線が広く取られているおかげか、とても開放的な空間に感じる。
転倒しにくく、身体をいたわるバリアフリーのアパートは一彦さんが見つけてくれた。
もし車いす生活になっても、今までと変わらない生活が送れるように。
「最初に言っておくけど、私が一緒に住むのは、あくまで晃が未成年の間だけだからね。それからは晃の人生なんだから、しっかりと自分で決めなさいよ」
母さんも荷物を持って、部屋に入ってきた。
母さんは今日から俺のサポートのためにここで暮らす。
一彦さんは仕事があるので、あの一軒家に残るけれど、週末には通ってくれることになっている。
「うん。ふたりともありがとう」
俺はずっと子供扱いされることがイヤだった。
でも、子供扱いしてたのは自分自身であって、ふたりはとっくに俺を一人立ちさせる準備ができていたのだと知った。
家族という狭間で何度も苦しくて揺れたけれど、やっぱり俺はふたりに感謝しかない。