16歳、きみと一生に一度の恋をする。


それから数日が過ぎて、俺の通院生活もはじまった。

難病医療センターは益川先生がいる病院より、少しだけ小さな建物だけど、その代わりに患者に寄り添うような医療体制がしっかりとされていた。

「初めまして。今日からきみの主治医になる斎藤と言います。益川先生には昔からお世話になっていて、晃くんの話も聞かせてもらっているよ」

斎藤先生は益川先生より年齢が若い男性だけど、物腰の柔らかい口調は一緒で、自然と信頼できる人だと安心できた。

「これから、よろしくね」

「はい。よろしくお願いします」

俺の治療も、ここからまたスタートしていく。

そのあと病院内を案内してもらったあと、俺は中庭にいた。

閉鎖的なイメージを消すように、ここは外来患​者や入院患者、その家族も利用できると説明してもらった。

治療の合間に少しでもほっとした気持ちになれるようにと作られた中庭は、光と緑があふれている。

「……あ」

俺は一際、大きな木を見つけた。

そこにはソメイヨシノの書かれていた。十二月の桜はまだつぼみすら付けていない。

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