16歳、きみと一生に一度の恋をする。


……そういえば、あの日は桜が満開だったっけ。

「晃」

と、そこへ。各先生に挨拶を済ませた母さんがやってきた。

「とても気持ちいい場所ね」と言いながら、俺はその手に握られている白い封筒に目が止まる。

視線に気づいた母さんが、手紙を俺に差し出した。

「晃宛に届いてたみたいで、お父さんが郵送してくれたみたい」

受け取ると、どこにでもあるような封筒なのに、その手触りには覚えがあって、俺は手紙を裏返す。

【蓮見晃さま】 

そう書かれている文字を見た瞬間に、熱いものが込み上げてきた。

藤枝ではなく、蓮見として届けられた手紙。

相変わらず差出人の名前はないけれど、俺には誰が送ってきたのかすぐにわかる。

ゆっくりと手紙の封を開けると、中には一枚の便箋が入っていた。そこに書かれていたのは……。

「あら、なにも書かれてないじゃないの」

「勝手に覗くなよ」

「なにかの間違いかしらね?」

俺は白紙の便箋をじっと見つめる。


「いや、間違いじゃねーよ」

これは間違いなく、汐里から俺宛の手紙だ。

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