16歳、きみと一生に一度の恋をする。
愛しいほどに
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なにも書かずに出した手紙をきみは受け取っただろうか。
恨みつらみのためじゃない。
本当は、本当はね……。
大好きって書きたかった。
雲の切れ間から、なにかがキラリと光った気がした。無意識にストラップがついているスマホをぎゅっとする。
「あ、汐里。バス来たわよ!」
一泊二日の手荷物を持って、私とお母さんは無料送迎バスに乗り込む。
私たち以外にも乗客はいたけれど、ちょうど最後列が空いていたので、並んで腰を下ろした。
今日は予定していた旅行に行く日。天気予報では曇りだったけれど、楽しみにしていたお母さんの気持ちが伝わったかのように空は快晴だった。