16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「そういえば、冬休みの課題は大丈夫なの?」
「うん。初日に終わらせちゃったから」
彼と別れた次の日。朝起きて、なんだか遠くにいってしまう実感もなくて。俺のことは忘れていいと言われたことも、悲しいというより、私の気持ちは聞いてくれないのって、だんだん腹が立ったりもして。
そういう悶々としたことを忘れたくて、課題に明け暮れた。
結果として一日で終わらせてしまったことはいいけれど、たかが一週間ほどで彼のことが頭から消えてしまうはずもなかった。
無料送迎バスに揺られること一時間半。着いたのは、候補に選んでいた老舗旅館だ。
数寄屋造りの旅館は、写真で見たものより立派だった。
広いロビーと、高級感のある絨毯。受付で無事にチェックインをして、担当の仲居さんに荷物を持ってもらって、私たちは部屋へと案内された。
【霞の部屋】と書かれた戸を開けると、青畳のいい香りが鼻をかすめる。