16歳、きみと一生に一度の恋をする。


温泉から出て、再び浴衣に腕を通す。部屋に戻るために館内を歩いていると、小さな鳥居を見つけた。どうやら神社になっているようで、そこには縁結びと書かれてある。

「ここ、けっこうご利益あるってレビューに書いてあったよ!」

「今さら縁結び? 俺らもう結ばれてるし」
「いいじゃん! 願っとこ」

仲が良さそうなカップルが小さな祠についている鈴紐を揺らすと、カランカランと音が鳴っていた。

……縁結び、か。

頭に浮かぶのは、晃のことばかり。

私たちって、なんで出逢ったんだろう。

私たちが、出逢ったことに意味はあったの?

『汐里、俺はさ、お前に世界で一番幸せになってほしいんだよ』

『だから俺のことは忘れていい。今まで色々と苦しませてごめんな』

言葉では私を引き離すくせに、あの時の晃は抱きしめる手を強くしていた。

やってることと、言ってることが真逆すぎて、呆れちゃう。

「汐里?」

神社をぼんやりと見つめていた私に、お母さんが声をかけてきた。

「ご、ごめん。早く部屋に戻ろう!」

せっかくの旅行なんだから、暗い顔はしたくない。

< 167 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop