16歳、きみと一生に一度の恋をする。
温泉から出て、再び浴衣に腕を通す。部屋に戻るために館内を歩いていると、小さな鳥居を見つけた。どうやら神社になっているようで、そこには縁結びと書かれてある。
「ここ、けっこうご利益あるってレビューに書いてあったよ!」
「今さら縁結び? 俺らもう結ばれてるし」
「いいじゃん! 願っとこ」
仲が良さそうなカップルが小さな祠についている鈴紐を揺らすと、カランカランと音が鳴っていた。
……縁結び、か。
頭に浮かぶのは、晃のことばかり。
私たちって、なんで出逢ったんだろう。
私たちが、出逢ったことに意味はあったの?
『汐里、俺はさ、お前に世界で一番幸せになってほしいんだよ』
『だから俺のことは忘れていい。今まで色々と苦しませてごめんな』
言葉では私を引き離すくせに、あの時の晃は抱きしめる手を強くしていた。
やってることと、言ってることが真逆すぎて、呆れちゃう。
「汐里?」
神社をぼんやりと見つめていた私に、お母さんが声をかけてきた。
「ご、ごめん。早く部屋に戻ろう!」
せっかくの旅行なんだから、暗い顔はしたくない。