16歳、きみと一生に一度の恋をする。


時間になると、部屋食が運ばれてきた。ビュッフェもいいなと思ったけれど、せっかくの旅行だし、懐石料理のコースを選んだ。

料理は、あんこうの肝雪囲いに、千枚かぶら寿司。まぐろ磯香造り、甘鯛の煮付け。それからふぐてっちり鍋を食べて、〆には雑炊にした。

夕食が終わったあとは、二回目の温泉へと入り、部屋に戻ると、布団が並んで敷かれていた。

私たちは十時には横になった。窓から入ってくる月明かりのおかげで、お母さんの顔がよく見える。

「川の字で寝るのって久しぶりだね」

大きくなると自分でできることが増えるぶん、きっと親との時間は少なくなっていく。
だから、今日は本当に旅行に来れてよかったって思ってる。


「汐里、この前は取り乱してごめんね」

横になりながら、お母さんと目が合った。

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