16歳、きみと一生に一度の恋をする。
やっと彼の足が止まる頃には、見慣れた河川敷に着いていた。喧騒としていた場所から離れたことで、草を踏む音さえも響いて聞こえる。
晃は私から手を離したあと、緩やかな傾斜になっている土手に腰を下ろした。
言葉にしなくても私に隣に座れと言っているような気がして、ちょこんと膝を抱えた。
「こんな時間に女ひとりでいて、どんだけ危ないかわかってる?」
きっとすでに時刻は十一時近くになっていると思う。あえてスマホには触っていないけれど、何回もポケットの中でメッセージの通知が来ていることは振動で知っている。
「バイト帰りにちょっとふらふらしてただけだよ」
「バイト? どこでしてんの?」
「どこでもいいでしょ。私だけ怒られるなんて納得できないよ。晃だって、この時間に遊び歩いてるくせに」
「俺はいいんだよ」
「じゃあ、私だってべつにいいじゃん」
「あのな……」
「帰りたくなかったの! どうしても、そう思ったの……」
声は徐々に小さくなっていく。
こんなの子供の駄々っ子みたいで、私らしくない。いつも感情が不安定になりかけても、深く深呼吸すれば、どうにか落ち着いた。
そうやって上手くコントロールしてきたはずなのに、今日は上手くいかない。
「なんのために連絡先、交換したんだよ。そういう時には俺を呼べ」
ぶっきらぼうな言い方の中に見え隠れしている彼の優しさ。……まさかそんなことを言ってくれると思わなかった。