16歳、きみと一生に一度の恋をする。


「呼んだら、来てくれるの……?」

「当たり前だろ」

瞳が重なり合った瞬間にドキリとした。

晃の瞳はまっすぐで逸らしたくないとさえ思わせる。


どうして私のためにそこまでしてくれるのかはわからない。それでも私は人からこんなに安心する言葉をもらったことはない。


「そろそろ送ってくから、ちゃんと家に帰れよ」

「……うん」

晃のおかげで、頭が冷えた。腰を上げる頃には、空に浮かんでいる星を見上げられるくらい落ち着いていた。


私の一歩先を歩く晃の髪の毛がさらさらと揺れている。

骨っぽい背中は分厚くて、きっとこの大きさにときめく女の子は何人もいるだろう。


「ねえ、晃のお母さんってどんな人?」

気づくと私はそんなことを聞いていた。

晃は少しだけ間を空けた。でもすぐにはっきりとした声が返ってきた。


「俺を育てることに苦労した人」

それがどんな意味を持つのかは知らない。

でもいくら尖っていても喧嘩をする顔とは違い、お母さんに対して強く悪態をついたりはしないのだろう。そんな姿が、ふと目に浮かんだ。


「だから俺はこれからもずっと母さんの味方なんだよ」

「素敵だね」

そう答えると、晃は歩く足を止めた。なぜかその横顔がひどく苦しそうに見える。
 
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