16歳、きみと一生に一度の恋をする。


「……いてっ、あいつら次はもっとぶっ殺す」

物騒なことを言いながら、ドアに寄りかかるようにその場に座り込んでいる。

しきりに口元を触っていると思えば、わずかに血が滲んでいた。


……思わずゴクリと息を飲む。

他者との関わりを遮断している私でも彼の名前くらいは知っていた。


一年三組の藤枝(ふじえだ)(あきら)

同級生の男子より頭ひとつぶん身長が高くて、身体も上級生と並んでも引けを取らない。


黒髪でピアスの穴は開いているけれど、じゃらじゃらとアクセサリーは付けていない。

バカみたいに大声を出したり、威張ったりはしていないけれど、立っているだけで目立つ彼のことをよく思っていない先輩たちはたくさんいると噂で聞いた。


……っていうか、なんでこの人がここにいるんだろう。

みんなが喧嘩していると見にいったのは、彼のことだ。 


逃げてきたのか、あるいは終わらせてきたのかは知らないけれど、クラスを間違えているんじゃないかな。

誰かとふたりきりになること自体、苦手だというのに、殺気だっている彼との空間は、とても息苦しかった。

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