16歳、きみと一生に一度の恋をする。
学校が終わり校舎を出ると、グラウンドでは運動部員たちが練習に汗を流している。
緑色のフェンスが続いている道を通りすぎ、俺の足は駅へと向かっていた。
学生であふれ返っているホームを避けるように、あえて車両の最後尾を選ぶ。
電車に乗り込み、揺られること二十分。改札口を抜けて目指したのは、大学医療センターだった。
薄茶色の建物は五棟あってすべて連絡通路で繋がっている。
内科、精神科、循環器科、小児科、外科と様々な診療科があり、ここら辺では一番大きな病院でもある。
俺は慣れたように受付を済ませて、神経内科を受診した。四十代半ばで物腰が柔らかい益川先生が主治医になって今年で八年が経つ。
治療はいつも同じで、最初にベッドに寝かされて腕に器具を巻かれる。
細い注射器が皮膚の中に入っていくのにも慣れてしまった。
「なにかあったら呼んでくださいね」
看護師が天井に付いているレールを滑らせるようにしてカーテンを閉めた。
点滴からゆっくりとステロイド剤が落ちてくる。
……二時間、なげえ。
そう思いながら、静かに目を閉じた。