16歳、きみと一生に一度の恋をする。



俺は中枢神経(ちゅうすいしんけい)系の疾患にかかっている。

原因は不明で、症状は患者によって異なる。
視神経だったら視野が欠け、運動麻痺を起こせば、喋りにくくなったり、物が飲み込みにくくなることもあるそうだ。

俺の場合は手足が痺れたり動作が鈍くなる感覚障害。

再発と寛解(かんかい)を定期的に繰り返すのが特徴的で、症状が出なければ通常どおりの生活が送れるけれど、こうして再発してしまうとステロイド剤を身体に入れなければならない。

「いつもみたいに二、三日は様子を見て、もし感覚が戻らなければすぐに受診しにきてね」

「……はい」

二時間後、先生の話を聞いて診療室から出た。

自分の姿が反射して見えるほど綺麗な廊下を歩いていると、【リハビリテーション】と書かれた場所に目が止まった。

そこにはなんらかの理由で身体に障害を抱えてしまった人たちがいる。

自分はまだ大丈夫。まだひどくはない。

そう思ってもこの病気は一度発症してしまうと完治することはないらしい。

さらに新たな症状が出ると既存の症状が悪化するという無限ループ。

つねに新しい治療法は開発されていても、脳や脊髄(せきずい)のあちこちにできている病巣は消えることはない。

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