16歳、きみと一生に一度の恋をする。
次の日。俺は日課になっているポストを開ける。多い時で三日に一回。少ない時で1カ月から3カ月周期で送られてくる手紙は、今日もポストに届いていた。
こうして俺が毎日確認しているように、もしかしたら彼女も忘れられないようにと送ることが日課になっているのかもしれない。
「おい、藤枝」
学校に向かう通学路の途中で、他校の生徒に絡まれた。
人数は四人。人のことを覚えるのが得意でないせいか、知ってる顔は誰もいない。
「お前さ、昨日俺の女にちょっかい出しただろ」
「……は?」
ただでさえ気分が落ちているっていうのに、身に覚えのないことを言われて視線が鋭くなる。
「しらばっくれてんじゃねーよ。昨日俺の彼女がお前に無理やり誘われて怖かったって泣きついてきたんだぞ!」
……昨日? 女といえば、病院帰りに会ったやつしか思い浮かばない。
もしかしたら、冷たくしたことが気に障り、女が彼氏を使って仕返ししようとしてるのかもしれない。
……うぜえ。面倒くさい。
相手になんてしたくないのに、女の彼氏だけではなく、その仲間たちもやる気満々のように睨みつけてくる。
「覚悟しろよ、藤枝……!」
一斉に拳を向けてきたので、俺はカバンを路肩に投げる。十分、いや、五分あれば片付く。
仕方なく相手をしてやろうと思った時、ガクッと膝が落ちるような感覚に襲われた。
おそらく病気のせいだろう。その隙に、男たちは次から次へと殴りかかってきた。
視界がぼやける。また口の中に鉄の味が広がっていく。
喧嘩を覚えたのは、いつだったか。
たしか意味がわからない手紙が届いて、その理由を探って、すべてを知ってしまった頃だ。
自分から喧嘩を吹っ掛けなくても相手はおのずと寄ってくる。
喧嘩をしてると、その瞬間だけは頭が空っぽになれるような気がして、それをストレスの捌け口にしていた。
……だから俺はいつまで経ってもガキなんだ。