16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「冷やすのはいいから、ちょっと膝枕してよ」
「さ、さすがにそれは……恥ずかしいからイヤ」
「お願い。そしたらすぐ治る気がする」
「……う、うーん」
汐里はかなり渋っていたけれど、俺の押しに負けるようにして、ちょこんとソファに座ってくれた。
彼女の膝に頭を乗せると、自分でしてほしいと言ったくせに心臓の鼓動が速くなっていた。
「晃ならこういうこと、してくれる女の子はいっぱいいるんじゃないの?」
「今はいない。それに膝枕なんて、してほしいと思ったことなかったし」
「じゃあ、今はなんで?」
「さあ、なんでだろう」
今まで浅い付き合いばかりをしてきて、それが自分に合ってると思っていたのに……。汐里とは心を通わせたくなる。
けれど、同時に後ろめたさも感じる。
汐里のことを大切だと感じるほど、本当のことを言わなければいけないと思っていた。
「……なあ、汐里」
彼女の膝から頭を離した。次の瞬間に、足がテーブルの角に当たって揺れたあと、置いておいたカバンが床に落ちてしまった。
半分だけチャックが開いていたようで、逆さまになっているカバンから中身が出ていた。
「あーあ、待って。私が拾ってあげる」
そう言って汐里がカバンに手を伸ばす。
「ま、待って」
止めようとした声よりも先に、汐里の視線はあるものを見て固まっていた。
「これって……」
穏やかに時間が流れていた空間が、一瞬にしてピリピリしたものに変わっていく。
彼女が俺のカバンから拾い上げたのは、彼女が父親宛に書いた手紙だった。それは今日のぶんだけではなく、今まで送ってきていたすべての手紙だ。