16歳、きみと一生に一度の恋をする。
父が、今の晃のお父さん?
ってことは、お父さんの不倫相手は晃のお母さんだったということになる。
子供がいることは知っていた。てっきりふたりの間に生まれた子だと思っていたけれど……まさかそれが晃だったなんて。
なんにも理解できていないのに、動揺で身体の芯が冷えている。
……こんなこと、ありえるの?
晃が……晃が?
「し、汐里ちゃん」
足元がふらついてしまい、女将さんに支えられた。
「貧血かしら。手当てと一緒に少し休んだほうがいいわね」
「……すみません」
私は店の二階へと案内された。ここの定食屋は女将さんの自宅でもあり、一階が店で、二階と三階が自宅になっている。
「あ、みちる。ちょうどよかったわ。汐里ちゃんのこと部屋で休ませてあげてくれる? あと指を切ってるから手当てもお願いね」
そう言って女将さんは救急箱を自分の娘に渡す。
……みちる。聞き覚えがある名前だと思って顔を上げると、そこにいたのは冨山さんだった。
「え、どういうこと……?」
「あはは……。説明はその、手当てしながらするね」
冨山さんの部屋は二階の角にあった。ピンク色のカーテンに、ふわふわのクッションと可愛らしい部屋だった。
「とりあえずここに座って、怪我したところ見せて?」
「う、うん」
私はベッドに腰かけて、親指を冨山さんに見せる。彼女は清潔なガーゼで血を拭き取ったあと、丁寧に消毒して絆創膏を貼ってくれた。