16歳、きみと一生に一度の恋をする。
週末を迎えると、親指の切り傷は絆創膏を貼らなくても大丈夫なほどに治っていた。
私は珍しく図書室で来月に行われる中間テストの勉強をしていた。勉強はひとりじゃないと集中できないタイプなんだけど、私の隣には冨山さんがいる。
「ねえ、今井さん。ここの数式ってこれで合ってる?」
「あ、違うよ。これはね……」
彼女の勉強を手伝うために、カウンター席で肩を並べて座っていた。
どうやら冨山さんは数学があまり得意ではないようで、『教えてほしい』と頼まれて、こうして一緒に図書館にやってきたのだ。
……お試し期間とはいえ、休日に冨山さんと会っているなんて不思議な感じがする。
勉強は昼食を挟んで三時間で終わりにして、私たちは図書館を出た。
「今井さんの私服って可愛いね!」
「そう? セールで安くなってたワンピースだけど」
「えーどこのお店? 今度一緒に買い物も行こうよ!」
冨山さんは人懐っこい性格をしてるので、なんだかずっと友達だったような気分にさせてくれる。
まだ友達を作ることに前向きにはなれていないけれど、一緒にいると素直に楽しいと思えていた。
「今井さんも今日はバイトだよね? 私も夕方から入ってる」
「カフェだっけ?」
「うん。サービス券あるから今度おいでよ。パンケーキがすっごく美味しいんだよ!」
「へえ、そうなんだ」
……パンケーキか。驚かれるから言わないけど、食べたことない。そういう店は気になってもひとりじゃ行きづらいし、誘ってくれる友達もいなかったから。