16歳、きみと一生に一度の恋をする。


バイトが終わったのは予定どおりの午後十時だった。後片付けをして私は店を出る。

……なんか疲れたな。

特別に混んでいたわけじゃなかったけど、暇だと晃のことを考えてしまうから、自分から仕事を探していつも以上に動いてしまった。

早くお風呂に入りたい。入浴剤まだ残ってたかな。そんなことを考えながら歩いていると、背後で足音が聞こえた。

いずれ抜かしていくだろうと思ったけれど、足音は一定の距離を保っている。

……まさか、付けられてる?

思い過ごしかもしれないとしばらく様子を窺っていたけれど、やっぱり足音は私の歩くペースに合わせているように感じた。

……もしかして、冨山さんが言ってた変な人?

そうかもしれないと思えば思うほど、怖くなって変な汗までかいてきた。

ポケットからスマホを取り出して、お母さんに連絡しようとしたけれど、こんなことで心配かけたくないと、指が戸惑う。

そうこうしているうちに、足音が近づいてきているような気がして、私は公園のトイレへと逃げ込んだ。

ど、どうしよう。どうすればいいの?

恐怖でスマホを握りしめていると、手の中でブーブーとバイブ音が鳴る。

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