16歳、きみと一生に一度の恋をする。
薄暗い個室で光っている画面。そこには【着信 晃】と表示されていた。
と、その時。
……ドンドンドンッ!!
トイレのドアを叩かれて、私は震え上がる。恐怖のあまり晃からの着信を取ってスマホを耳に当てた。
『あー、もしもし俺だけど、やっぱりもう一度話せな――』
「あ、晃っ……」
私の訴えるような声を聞いて、晃はすぐに異変に気づいてくれた。
『どうした?』
「い、今、変な人に追われてて……」
『は? 今どこにいんの?』
「四丁目の公園の女子トイレ」
もう関わらないって頭では思っているのに、私はこうして頼ろうとしてる。
『待ってろ。すぐ行くから!』
それからどのくらい時間が経っただろう。妙に辺りが静かだと感じている中で、再びドアがノックされる。
ビクッとしていると、ドアの向こう側から声が聞こえた。
「ハア……俺、開けて」
ずっと張り詰めていた緊張の糸がほどけていく。私はゆっくりとドアを開けた。そこには息を切らせている晃が立っていた。
……本当に来てくれた。
ふっと、力が抜けそうになる身体を、晃に引き寄せられる。もう脳が覚えてしまっているホワイトムスクの香りに包まれた。
「遅くなってごめん。トイレの前に男がいたから近くの交番に突き出してから来た。大丈夫か?」
「……うん。ありがとう……」
まだ手が震えている。それに気づいた晃は、私のことを公園内のベンチに座らせてくれた。