16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「ほら」
自販機で買ってくれた温かいお茶を手渡されると、やっと気持ちが落ち着いてきた。
「……ごめん。呼んだりして」
「なんでお前が謝るの?」
「だって……」
「怖かっただろ。汐里がなんにもされなくてよかった」
そう言って、晃もベンチに腰かける。晃の手を払ってまで突っぱねたのは私なのに、その優しさに涙が出そうになった。
虫が群がっている外灯が私たちのシルエットを地面に映し出している。
やっぱり晃は影も大きかった。
「どうして晃は私に優しくしてくれるの? 知ってるんでしょ。お父さんと晃のお母さんが不倫した末に一緒になったこと」
「うん」
「晃は連れ子ってことだよね?」
「そう。でも本当の父親の顔は知らない。母さんは俺のこと未婚で産んだから」
私の勝手なイメージでは、父は若い人と一緒になったんだろうと思っていた。だから私と同い年の子供がいる人と再婚していたなんて想像すらしていなかった。
「今朝、お前の手紙が届いたよ。あれって誰宛?」
私は押し黙るように口を結んだ。
【裏切り者】
それは父だけじゃなく、父の新しい家族に対しても思っている。その対象の中に晃がいるとしても私の気持ちは変わらない。
「汐里のこと騙すつもりはなかったんだ」
「でも知ってて黙ってたんでしょ?」
次に口を閉ざしたのは晃のほう。