16歳、きみと一生に一度の恋をする。
午前の授業が終って昼休み。俺はいつものように部室棟に向かった。ソファに寄りかかりながら、眺めたのは汐里の手紙だった。
【裏切り者】と書かれた手紙が一番最初に送られてきたのは、十一歳の時。
両親が再婚して、現在の一軒家に住みはじめて三カ月が経過していた朝だった。
たまたま郵便受けを確認した俺はすぐに奇妙な手紙に気づいた。
それはうちの住所を記しているだけで、差出人の名前も受取人の名前も書かれていない真っ白な封筒だった。
当時、謎解きという類いのテレビにハマっていた俺は、不自然すぎる手紙に興味を持った。
誰かからの挑戦状かも、なんて軽い気持ちで手紙の封を開けた。
【裏切り者】
便箋の余白が目立つほどに小さく書かれていた字は、明らかに子供のものだった。
クラスメイトのイタズラだと思った。
気味が悪くなってゴミ箱に捨てた次の日も、一週間経ったある日の朝にも、少し忘れかけていた頃になれば、必ずその手紙は送られてきた。
何度も何度も、同じ言葉で。