16歳、きみと一生に一度の恋をする。
――蓮見汐里。その名前を知った瞬間に、俺はすべてのことを察した。
使い慣れたはずの名字を失った彼女とは反対に、俺は使い慣れない名字になった。
――蓮見晃。浮気して出ていった彼女の父親はあの人であり、その浮気相手は母さんのことだった。
噂の中心にいた汐里は、人を避けるようにひとりで帰っていた。
その小さな身体で大きなものを背負っている彼女のことを直視できなくて、俺は逃げるように去った。
それからの俺は変わった。
両親の顔を見たくなかったことと、進行していく病気にイライラしていたことも重なって、日に日に反抗的になっていった。
そして高校受験を控えた中学三年の時。どこでもいいやと適当に選んだ高校説明会の会場で、汐里のことを見かけた。
手紙は相変わらず届いていたけれど、姿を見たのは約四年振りだった。
ふいに訪れた二度目の再会では逃げなかった。
その代わり、あまりに綺麗になってて驚いた。
どれだけの苦労を重ねてきたのか、誰も信用しないって顔で凛としてて。けれど、楽しそうに話している人たちのことを遠目で見つめては、憂いをおびた瞳をする。
そんな彼女に図々しくも、俺は一瞬で惹かれていたんだ。