16歳、きみと一生に一度の恋をする。
その夜、夜遊び仲間たちといつものカラオケ店にいた。
いつの間にか増えて、いつの間にかいなくなっているメンバーの顔ぶれは日によって違う。
タンバリンやマラカスを無意味に振り回しているやつらを横目に、俺は部屋の隅でスマホをいじっていた。
「ねえ、晃に彼女がいないなら私が立候補してもいいのかな?」
鬱陶しいほどに身体を寄せてくる女に俺は見向きもしない。
なんとも思っていない女と時間だけを潰していた時期もあったけれど、心臓の音が激しく反応するのは汐里だけ。
本当は心の中だけで想っているつもりだった。だから同じ高校に入学しても半年間、声をかけなかった。
見てるだけでいいって思っていたのに……彼女への気持ちは日を追うごとに広がっていく。
自分でもどうにもできないくらいに。
「ちょっと、晃。聞いてる?」
女のうるさい声が響く中で、スマホの画面には最新のニュースが通知されていた。
【女子高生 通り魔に刺される】
事件現場は別の県だったけれど、俺の頭によぎったのは、やっぱり汐里のこと。
この前は間一髪のところで助けてあげられたけれど、ああやって夜道を歩いている女子高生を狙っている男は他にも潜んでいるかもしれない。
そう思うといてもたってもいられなくなって、俺はカラオケ店を飛び出していた。