16歳、きみと一生に一度の恋をする。
彼女に連絡しようとメッセージを打ったけれど、大嫌いと言われたことを思い出して手が止まる。
……ただ心配なだけなのに、その気持ちすら汐里にとっては負担になるかもしれない。
もどかしい。やるせない。
なんにも阻むことがなかったら、今すぐに会いにいけるのに。
俺は迷った末に、途中にあったホームセンターに寄った。そこで〝あるもの〟を買い、この前汐里が襲われかけた公園へと続く道を歩いていると……。
「藤枝くん?」
ふと、名前を呼ばれた。
声がしたほうに視線を向けると、そこには冨山がいた。冨山とは小中も一緒だったけれど、あまり話したことはない。
「もしかして今井さんを迎えにいくところ?」
その質問に俺は首を横に振る。そういえば、ふたりはこの前一緒にいた。
いつ仲良くなったのかはわからないけれど、おそらく汐里の性格からして、俺たちの家族関係のことは話していないだろう。
「あいつって今バイト?」
「うん。そうだよ。今井さんから聞いてるかもしれないけど、うちの定食屋で働いてくれてるんだよ」
「……そう、なんだ」
お互いのことを話せない事情がたくさんあるとはいえ、俺は汐里のことをなにも知らない。
俺だって……汐里に話せないことがある。