16歳、きみと一生に一度の恋をする。


翌朝。私もぐっすりと眠れたおかげなのか、とても目覚めがよかった。お母さんが握ってくれた梅おにぎりを食べて、一緒に家を出る。

学校に着いて昇降口を過ぎると、なぜか廊下で生徒たちがあふれかえっていた。

騒然としてる空気に戸惑っていると、「今井さん」と冨山さんに声をかけられた。

「なんかね、西側から回らないと教室に入れないって」 

「なんで?」

「ほら、あれ」

人だかりの隙間を見つけて確認すると、一年生の階の窓ガラスが割られていた。

どうやら一、二枚ではないようで、廊下にはたくさんの破片が散らばっている。

吹き抜けのようにガラスがなくなってしまっている光景は異様で、先生たちが片付け終わるまではここを通らないようにと、声掛けをしていた。

「私も今来たばっかりだからよくわかんないんだけど、なんか昨日の夜に割られたらしいよ。イタズラかな?」  

「うーん、わかんないけど」

私は冨山さんと遠回りをするために引き返していた。

……なんか最近、物騒だな。

自然とカバンにつけている防犯ブザーをぎゅっとしていると、一際目立つ男子生徒がこっちに向かって歩いてきた。晃だった。 

彼から見られている視線はいつも感じている。そのたびに私は露骨に瞳が重ならないようにしてきた。

こうやって避け続けていれば、きっと無関係だった頃に戻れる。

そんなふうに自分に言い聞かせている時点で、無関係とは程遠いというのに、私はこんな方法しか知らない。

< 76 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop