16歳、きみと一生に一度の恋をする。
翌朝。私もぐっすりと眠れたおかげなのか、とても目覚めがよかった。お母さんが握ってくれた梅おにぎりを食べて、一緒に家を出る。
学校に着いて昇降口を過ぎると、なぜか廊下で生徒たちがあふれかえっていた。
騒然としてる空気に戸惑っていると、「今井さん」と冨山さんに声をかけられた。
「なんかね、西側から回らないと教室に入れないって」
「なんで?」
「ほら、あれ」
人だかりの隙間を見つけて確認すると、一年生の階の窓ガラスが割られていた。
どうやら一、二枚ではないようで、廊下にはたくさんの破片が散らばっている。
吹き抜けのようにガラスがなくなってしまっている光景は異様で、先生たちが片付け終わるまではここを通らないようにと、声掛けをしていた。
「私も今来たばっかりだからよくわかんないんだけど、なんか昨日の夜に割られたらしいよ。イタズラかな?」
「うーん、わかんないけど」
私は冨山さんと遠回りをするために引き返していた。
……なんか最近、物騒だな。
自然とカバンにつけている防犯ブザーをぎゅっとしていると、一際目立つ男子生徒がこっちに向かって歩いてきた。晃だった。
彼から見られている視線はいつも感じている。そのたびに私は露骨に瞳が重ならないようにしてきた。
こうやって避け続けていれば、きっと無関係だった頃に戻れる。
そんなふうに自分に言い聞かせている時点で、無関係とは程遠いというのに、私はこんな方法しか知らない。