16歳、きみと一生に一度の恋をする。
校舎にチャイムが鳴ると、授業は通常どおり行われた。窓ガラスの修理は業者が来て午前中には直るそうだ。
「俺ら藤枝が校舎に入っていくところ見たもんなー。警察に突き出したほうがいいんじゃねーの?」
わざと大きな声で噂を言いふらしていたのは、三年生だった。しかもそれは晃のことをしつこく追い回していた人たちだ。
最近大人しいと思っていたのに、まだ晃に対しての恨みは消えていなかったようだ。
……もしかして、窓ガラスって、この人たちがやったんじゃないの?
晃に喧嘩で勝てないからって、これで仕返ししようとしてるんじゃないかと考えた。
だとしたら、なんて幼稚なんだろう。
ふつふつと、苛立ちが込み上げてくる。
だけど、同時に私には関係ないと突っぱねてる自分もいる。
晃が周りからどう思われようと、私が関わる必要はどこにもない。
「……ねえ、今井さん」
二限目の休み時間。相変わらず収まらない噂話が飛び交っている中で、冨山さんの様子がおかしいことに気づいた。
「どうしたの? 具合悪いの?」
「ううん。そうじゃなくてね、窓ガラスを割ったのは、絶対に藤枝くんじゃないよ」
それは明らかになにかを知っている口調だった。
「藤枝くんから言うなって言われてるんだけど、今井さんにあげた防犯ブザーあるでしょ? それね、実は藤枝くんから渡してくれって預かったものだったんだ」
「……え?」
私は驚いて目を丸くさせる。冨山さんは昨日晃と交わした言葉と一緒に、詳しいことを話してくれた。