16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「昨日バイト帰りに道で会ったの。四丁目の公園の前の道。多分、今井さんのことが心配でそこにいたんじゃないかな」
……私が、変な人に追われた場所だ。
「でね、防犯ブザーを受け取った時、たしか時間は九時五十分を回ってたよ。だから藤枝くんが犯人なわけないでしょ?」
たしかに、あの道から学校までは二十分以上かかるし、どう考えても警備員が駆けつけた十時に窓ガラスを割ることはできない。
晃が犯人じゃないことはわかっていた。でもまさか、防犯ブザーをくれたのが彼だったなんて知らなかった。
「藤枝くん、防犯ブザーはお守りがわりだって言ってた。自分で渡したらって勧めんだけど、今井さんのこと苦しめたくないからって」
……バカじゃないの。
私ははっきりと大嫌いって言った。
なのに、わざわざ防犯ブザーを買ってくるなんて、なにを考えているんだろう。
晃のことを知る努力なんて、必要ない。
頭ではわかっている。
なのに、考えてしまう。
少し買うのが恥ずかしかったであろうピンク色の防犯ブザーを一体どんな気持ちで選んだのか。
私が通るとも限らないのに、どんな顔であの道を歩いていたのか。
その理由さえ想像する必要ないのに……きみのことが頭から消えない。