16歳、きみと一生に一度の恋をする。


しばらくすると、再び廊下が騒がしくなっていた。

教室のドアを開けて確認すると、学年主任の先生が晃を連れて戻ってきた。その後ろには澤村先生もいる。

みんな野次馬のように教室から廊下を覗き込んでいた。

「まだ詳細は確認中だが、もしこれをきみがやったのなら、どういう処分になるのか覚悟しておきなさい」

学年主任は業者が張り替えている窓ガラスを指さしていた。

「でも藤枝がやったって証拠はありませんよ?」

「だけど噂がこんなにも広まってる。藤枝くんだって聞いても否定しないじゃないか」

「それは……」

晃のことをかばう澤村先生が黙ってしまった。周りがこんなに大騒ぎしているのに、晃はまだ一言も声を出さない。

そういう態度にますますみんなは過剰に反応して、またあれこれと憶測を立てはじめる。 

どうしてだろう。私には晃がなにを考えているのかわかる。

だって、私もそうだった。

自分のことなのに、自分の知らない場所で広がっていく噂は大きくなりすぎて、否定すら無意味なものだと思えてしまう。

もう、なんだっていい。面倒くさい。だったらひとりでいよう。

そう思っていた自分と晃が嫌というほど重なる。

でもそんな中で、私のことを大切に扱ってきたのは誰?

人に大切にされると、少しだけ自分のことも大切にしたくなる。

そう思わせたのは、紛れもなく晃でしょう?

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