16歳、きみと一生に一度の恋をする。


「……私、一緒にいました!」

気づくと、教室から出ていた。みんなが一斉に私のことを見てる。

晃も驚いたように見ていた。いつも逸らしていた瞳が、久しぶりに重なった。

「窓ガラスが割れた十時頃、私は藤枝くんと一緒にいました。ちゃんと調べてください。藤枝くんがやったと広めている三年生たちにも話をしっかり聞いたほうがいいと思います」

晃は私のことを守ってくれた。だから今は私も晃のことを守りたい。

その後、三年生は職員室に呼ばれて事情を聞かれていた。

もちろん認めていないらしいけれど、突き詰めれば証拠は出てくると思う。

「藤枝くんと今井さんって、どういう関係? 一緒にいたってことは付き合ってるってこと?」

晃が犯人だという噂は形を変えて、今度は私たちのことを周りは詮索していた。

こうなることはなんとなくわかっていた。わかっていて言ったのだから、噂されるのは仕方ない。


「……汐里!」

飲み物を買おうと、自販機のある通路を歩いていると、晃が私のことを追ってきた。


「さっきはありがとう」

晃から言われた初めてのありがとうは、少しくすぐったかった。 

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