16歳、きみと一生に一度の恋をする。


翌朝。ひどく頭痛がしていた。おそらくまだ続いている眼球の揺れが原因だ。 

険しい顔をしながらリビングに向かうと、すでに朝食が準備されていた。

「おはよう、晃」

一彦さんは新聞を片手に、コーヒーを飲んでいる。結局、昨日はなにも聞けなかった。

「ねえ、あなた。ポストに変な手紙が入ってたんだけど」

と、その時。母さんが手紙の束を持ってやってきた。今日は早起きができなかったせいで、郵便受けのチェックをしていない。

母さんの手に握られていた白い封筒を見て、心臓が一気に動揺していた。

「ほら、見て」

「……これは」

止める間もなく手紙は一彦さんの手に渡ってしまった……が、それはただの宛名間違いの手紙だった。

「仕事に行く前に郵便局に寄って届けてくるよ」

「お願いね」

そんなふたりの会話を聞きながら、俺はホッと胸を撫で下ろす。

……一瞬、汐里からの手紙だと思った。

彼女からの手紙を止めている理由はいくつかある。

やっぱり母さんの今の生活を乱したくないということ。そして、あえてうちの住所しか記入していないシンプルな手紙にも、汐里なりの意味があるような気がしていた。


澤村から留年になると釘をさされたことが効いていて、最近は遅刻しないで学校に行くようにしている。

正門を抜けて校舎に入ると、女子たちの声が飛んできた。 

< 87 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop