16歳、きみと一生に一度の恋をする。
翌朝。ひどく頭痛がしていた。おそらくまだ続いている眼球の揺れが原因だ。
険しい顔をしながらリビングに向かうと、すでに朝食が準備されていた。
「おはよう、晃」
一彦さんは新聞を片手に、コーヒーを飲んでいる。結局、昨日はなにも聞けなかった。
「ねえ、あなた。ポストに変な手紙が入ってたんだけど」
と、その時。母さんが手紙の束を持ってやってきた。今日は早起きができなかったせいで、郵便受けのチェックをしていない。
母さんの手に握られていた白い封筒を見て、心臓が一気に動揺していた。
「ほら、見て」
「……これは」
止める間もなく手紙は一彦さんの手に渡ってしまった……が、それはただの宛名間違いの手紙だった。
「仕事に行く前に郵便局に寄って届けてくるよ」
「お願いね」
そんなふたりの会話を聞きながら、俺はホッと胸を撫で下ろす。
……一瞬、汐里からの手紙だと思った。
彼女からの手紙を止めている理由はいくつかある。
やっぱり母さんの今の生活を乱したくないということ。そして、あえてうちの住所しか記入していないシンプルな手紙にも、汐里なりの意味があるような気がしていた。
澤村から留年になると釘をさされたことが効いていて、最近は遅刻しないで学校に行くようにしている。
正門を抜けて校舎に入ると、女子たちの声が飛んできた。