16歳、きみと一生に一度の恋をする。
とりあえず私たちは電車に乗って移動をはじめた。でも、私はどこに行くのか、今日はなにをするのか、晃からなにも聞いていない。
「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないの?」
「着くまで教えない」
「もう……」
頑なに行き先を言わない晃に呆れながら、私は電車の背もたれに寄りかかる。
……なんか電車も久しぶりに乗った気がする。
揺れってこんなに、心地よかったっけ。
それとも、そう感じてしまうのは、隣から香ってくるホワイトムスクのせいだろうか。
それから一時間。色気もなくウトウトしかけていると、「降りるぞ!」と急に晃が席を立った。
「え、う、うん」
電車を降りて改札口を抜けると、私はあるものを見つけて胸を高鳴らせる。
それは建物の上から少しだけ顔を出している観覧車だった。
ここで電車を降りた人たちはみんな同じ場所へと行くようで、家族連れもカップルや友達同士もカラフルな観覧車を目指して足並みを揃えている。
「もしかして、遊園地?」
「うん。そう」
晃は私を誘った時からここに来ることを予定していたらしく、チケットは前売りを用意してくれていた。
……私が返事をしたのは昨日だったのに。
もし断っていたらチケットはどうするつもりだったのかな。
晃を避けることはしなくなったけれど、なんとなく休日に遊びにいくことには抵抗があった。
晃のことがイヤとかじゃなくて、私の心の問題。だから返事をするのに時間がかかってしまった。