転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
悪夢の幕開け
 無事にフィデルを地下牢から救出することができた。ここまでの道のりは、決して楽なものではなかったけど……。

 ――遡ること、数時間前。

 私はまず、自分が閉じ込められた部屋から出る方法を考えた。この部屋の鍵は、元々ついていなかったようで、明らかに後からつけられたようなものに見える。

 これ、力ずくでなんとかできそうね……。

 みんなが寝静まったであろう時間に、自分の髪に差していた細いヘアピンで、鍵穴をガチャガチャといじってみた。
 こんなコソ泥みたいな真似をしたことは初めてだったけど、私は才能があったようで、ものの十分ほどで鍵を開けることに成功した。

 扉が開くことを確認して、すぐに閉める。救出するのはまだ先だ。下手に動いて、見張りに捕まってしまえば元も子もない。

 私の力は、二十四時を回った時点で見られる時間がリセットされる。日付が変わっているので、もう一度フィデルの姿を確認することにした。

 ……やっぱり、手を拘束されたまま寝てるわ。

 フィデルの拘束された手をアップにして、なにで拘束されているかを確認すると、なんと最悪なことに鍵付きの手錠だった。

「フィデルを助けるには、手錠の鍵も必要ってこと!?」

 これにはさすがの私も声を上げ、頭を抱えた。誰が持っているかすらわからない鍵のありかを必死で探し、あの鍵は、地下牢へと続く扉の入り口に立つ兵士が持っていることを突き止めた。

 兵士がいるだけでも厄介なのに、その兵士からどうやって鍵を奪えばいいのよ……!

 こんなとき、頭の切れるフィデルがいれば、きっといいアイディアを出してくれたのに。ひとりでなにかをするということが、いかに大変で孤独なことかを、私は改めて思い知る。
 ない頭を使って、自分なりに作戦を練った。見張りの兵士は、時間ごとに交代して、その際に鍵を受け渡している。
< 106 / 147 >

この作品をシェア

pagetop