転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 フィデルに言われてハッとする。そうだ。私たちは、事件を止めるために、今こうやって走ってるんじゃない。

 一度でも足を止めれば、もう走れなくなりそうだった、だからこそ、この足を止めてはいけない。
 もう、あと少しで学園につく。なにも起こらないうちに、私たちがコディを止められれば、事件は起きない。

 強い向かい風で、瞬きするのを必死に耐えながら、私はコディを必死で見続けた。
 すると、コディが教室に入り、持っていた塊を置いて出て行く。

 ……嫌な予感がする。胸の中がざわついて、頭の中では警報が鳴っている。

 フィデルもこの予知を見る前、こんな感覚だったの?
 学園は、もう目の前まできていた。
 新入生の両親と思われる人たちがちらほらといて、楽しそうに談笑している。
 
 フィデルが学園へ入ろうとした瞬間、私にはコディが不適な笑みを浮かべ、手元を動かしている姿が見えた。

「だめ!」

 咄嗟にフィデルの手を引いた。あまりに強く引いた反動で、私たちは一緒に地面に倒れこむ。
 私たちが倒れたと同時に、大きな爆発音がした。

 ――私たちは、間に合うことができなかった。

 周囲にいた人たちも、なにが起きたかわらないようで唖然としている。
「お、おい……! あれ!」

 ひとりの男性が声を上げ、指をさした方向を見ると、ホール近くの教室が燃えていた。
 みるみるうちに、炎が広がるのが目に見える。

「どういうことだ! 中に娘がいるんだぞ!」

 周りはパニック状態になり、中に助けに入ろうとする人もいた。

「待って! 今中に入るのは危険よ!」

 危険を顧みず、助けに行く男性を止めに入る。気持ちはわかるが、無茶するとどうなるかがわからない。

「うるせぇ! ……お前たちだったよな。事件が起きると言って、それを止めるって言ったのは! もう、事件は終わったんじゃなかったのかよ! 終わってないなら、どうして止められてないんだ!」

 男性は怒鳴りながら、思い切り私の胸倉を掴んだ。いつ殴りかかられてもおかしくない状況だ。
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