転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「……ごめんなさい。私たちの力不足だった。許してくれとは言わないわ」
「力不足で済む話じゃねぇんだよ! 早くしないと、たくさんの子供たちが!」
「わかってる。だから、せめて私たちが必ず助ける」
「……っ! どうやって!」

 胸倉を掴まれている手に、ギリギリと力がこもる。すると、フィデルが男性の手を掴み上げた。

「事件が起きることは、既に陛下の耳にも入っているはず。助けはちゃんと来る。ここで今、お前が助けに行ったところで無駄死にだ」
「助けが来るまで黙って見てろっていうのか! もし手遅れになったら、お前たちはどう責任を取るつもりだ!」
「……責任なら、今から取る。だから、ここは俺たちに任せてくれ」

 フィデルの強い意志が伝わったのか、男性はそれ以上なにも言わなくなった。
 揉めている場合じゃない。すぐに、逃げ遅れている学園内の人たちを助けなくては。

 私とフィデルは顔を見合わせて頷くと、学園内へと走って行った。
 私が力を使い、学園内の状況を整理する。

 ホールにはまだ、そこまでの火が回っていない。すぐに近くの非常口から脱出すれば、無傷のまま外に出られる。

 だが、新入生たちは非常口の場所がわからないようだ。その場で泣き崩れて動けなくなっているものや、火が回っているほうへ逃げているものもいる。

 今日、学園へ来ていた教師たちはホールから遠い職員室にいたようで、教師たちも近くの非常口から既に脱出をしていた。よって、取り残されているのはなにも知らない新入生たちだけ。
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