転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 ――このままじゃ、まずい!

 ホール近くの非常口から、誰か出て来るのが見えた。

 あれは……エリオットとロレッタ!? ふたりは無傷のまま、誰も引き連れることなく、自分たちだけで非常口から脱出していた。

「最低……! 国民を守るどころか、見捨てるなんて……!」

 これが、次期王と王妃のやることなのかと、強い憤りを感じる。ふたりがきちんと、ホールにいる新入生たちを非常口に誘導すれば、こんなに人がバラバラになることはなかったのに。

「シエラ! 今は怒っている場合じゃない! ひとりひとりを助ける時間なんてないんだ。脱出経路があるなら、それを知らせるのが先だ!」

 フィデルに言われ、私は怒りをグッとこらえ、冷静さを取り戻した。
 フィデルの助言で、私はあることを思いつき、力を使い安全を確保しながら放送室へと向かう。

 放送室につくと、学園中に聞こえるように、非常口の場所を何度も繰り返して言った。危険な場所も同時に言い、近づいてはいけないことを知らせる。

 私の放送を聞いた新入生たちは、理解までに少しの時間はかかったものの、そのうち周りの仲間と手を取り合い、自分たちの足で非常口へと走り出した。

 燃え盛る炎が、どんどん範囲を広げていく。私たちも、ここに長居はできない。
 新入生は、見る限りもう学園内には残っていなそうだ。さっさと私たちも脱出してしまおう。

「……そういえば、コディはどこにいるんだ」

 ふと、フィデルが呟いた。
 新入生の救助に必死で、犯人であるコディを見ることを、すっかり忘れていた。
 すぐさま力を使ってみる。でも、もう一瞬といっていいほどしかコディの姿を確認できない。

 今日はフィデルの救出から今の今まで、散々〝千里眼〟を使って来た。ここにきて、限界がきていたのだ。
 一瞬しか見えなかったけれど、ひとつ、わかったことがある。

「まだ、コディは学園内にいる……」
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