転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 学園内のどこかで、座り込んでいるコディが見えた。
 あまりに一瞬で、場所が特定できない。あてもなく探すことは、私たちにとってもかなり危険な行為になる。
 コディとした会話の中で、なにかヒントがないかを思い出していると――答えは、簡単に見つかった。

「……図書室。図書室だわ!」
「! そうか。あいつ、いつも図書室にいたと言っていたな」

 コディにとって、学園の図書室は思い入れがある場所。――憧れている、ロレッタと出会った場所だ。

「図書室はどこなんだ?」
「それが……ここと同じ階なんだけど、今いるところとは反対側の校舎なの。あっちは、ホールに近い校舎。だから、火がかなり回ってる可能性が高い」

 一度、図書室のほうへ行ってしまえば、きっと私たちは後戻りできない。

「……俺は、行く」
「本気なの? 私ももう力は使えないのよ。コディを助けられる保障も、私たちが助かる保障だってない」
「ああ。それでも、俺は行く。このままあいつが死んでしまったら、俺は――後悔すると思うんだ」

 フィデルは、自分の両手を見つめながら言った。

 かつて、自分の手で守ることができなかった、母親のことを思い出しているのだろうか。

「これは俺のくだらないエゴだ。シエラを巻き込むつもりは――」
「〝ない〟なんて、言わせないからね! 私も行く。行って、コディに会って……教えて欲しい。どうしてこんなことをしたのか」

 どうして学園を燃やして、どうして自分は逃げようとしないのか。

 コディは主犯者。立場的に、逃げようと思えばいつだって逃げられた。なのに、図書室から今も尚動かないってことは……元々、死ぬつもりで事件を起こしたの?
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