転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「お前は、エリオットに過去の話をなにか聞かされでもしたのか?」
「いいえ? 僕なんかにすると思います? 僕が知ってるのは、フィデル様が王妃様を殺して幽閉されたっていう誰もが知ってる噂話だけ。……でも、見てたらわかりますよ。あんなに自信満々のエリオット様が、ここまでフィデル様を叩きのめすことに必死になるなんて、弟に異常なコンプレックスを抱いてるからなんだろうなぁって」

 コディの見解は当たっている。

 エリオットはフィデルを幽閉しほぼ無力状態にしたにも関わらず、それでいてフィデルと対等の力をほしがった。それが、私との婚約に繋がった。

 力を持っているかわからない好きでもない女に、何年も愛を囁き続けた。
 すべて、自分のためだけに。

「エリオットは、私たちを捕まえたあとどうするつもりだったの? フィデルが見た、偽造ではない本当の事件が起きたとき、私たちがいないでも防げるという根拠があっての行動だったの?」

「まさか! エリオット様は事件が起きることより、おふたりが事件を解決し国の英雄になることのほうが怖かったんですから。フィデル様が見た事件に関してはこう言ってました。『僕に危害がないならどこで起きても構わない。あのふたりの動き的に、城で起きる気配はなさそうだから、一週間城以外の大きな建物に近づかなければ、事件に巻き込まれることはない』と」

「なによそれ……いずれ王になる立場の人間が、国に起こるとわかっている事件をどうでもいいですって!? 陛下もそんな暴挙を許したの!?」

「いいえ。陛下はなにも知りませんよ。エリオット様が勝手にやったことです。陛下も含め、事情を知らない人間から見たら、ただただあなたたちが、大口叩いて事件を解決できなかった裏切者で、エリオット様は国民のために必死に頑張った英雄に思われていたでしょうね。結局、エリオット様は事件に巻き込まれた被害者になっちゃいましたけど、裏でこんな最低なことをしていたんですから自業自得です」

 エリオットは、私たちの動きを監視して、事件場所が城ではないと考えた。それは多分、私たちがいつも平気な顔をして城を出入りしていたから。事件が起きる可能性がある場所に、のんきに出入りするわけない。
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