転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「お前の言う通り、俺が持っていた〝予知能力〟の力は恐ろしいものだった。俺は、母が死ぬ予知を見た。そのときも、俺はどう回避するか、そのことばかり考えていた。どうすれば母を守れるのかって」

 何度聞いても、胸がきつく締めつけられる。だが、それからフィデルが話す内容は、私も初めて聞くものだった。

「まだ自分の能力をきちんと把握してなかった俺は、数日経っても母が生きていたことで、死を回避できたのだとすっかり安心しきっていた。でも、母は違った。俺が予知の話を本人にしたせいで、母はずっと自分がいつか死ぬかもしれない恐怖に怯えていた。夜も眠れなくなって、睡眠薬に頼るようになった。……ある日の夜、薬が効いて朦朧とした意識のまま部屋の外に出て、階段から落ちて死んだ」

 フィデルが予知の話をしたせいで、王妃様が死んだ……?
 こんな話は、知らない。フィデルも誰かに話すのは初めてなのか、よく見ると手が小刻みに震えている。

「……自分のせいじゃないと言いながら、本当は、俺が殺したようなものだ。俺が、予知を見たことを言わなければ」
「そ、そんなの、フィデルの憶測でしかないじゃない。誰かに確認したの? 睡眠薬を飲んでいたことや、怯えていたことを」
「していない。でも、目に見えて日に日に疲弊していたし、毎晩薬を飲んでいるところを目撃したんだ。例え憶測だったとしても、俺は予知の話をしたことも、母を守れなかったことも……ずっと後悔している」

 かける言葉が見つからない。

 それに、私はフィデルの話を聞いても尚、フィデルのせいとは思えなかった。
 王妃様だって、本当にフィデルが予知を話したことによって死んだのだとしても、フィデルのことを恨んでなどいないはずだ。
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