転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「……はぁ? なにその反応。つまんないんだけど。しかも急にヒーロー気取り? 迷惑なんだよ! 僕を助けたいなら、もう楽にしてよ……このまま、死なせてくれよ」
コディは、もっと怒り狂ったり、絶望するフィデルが見たかったのだろう。
『助ける』と言い歩み寄るフィデルを見て、あからさまに嫌な顔を見せると、とんでもないことを口走った。
死なせてくれって……? 爆弾を爆発させたあと、ロレッタとの思い出であるこの場所で、コディは最初から死ぬ気だった?そこまでが、コディの考えた計画だったの?
「僕にはもう、なにもないんだよ! 今までずっと友達もいなくて、ひとりだった僕に、ロレッタ様だけが声をかけてくれた。名前を覚えてくれて、優しくしてくれた。周りの人がどう思おうが、僕にとってロレッタ様は女神のような人だったんだ。だけど……ロレッタ様にとって、僕はただの都合いいおもちゃに過ぎなかった。結局また、僕はひとり。こんな辛い世界でひとりで生きていくくらいなら、ここで死なせてくれ」
コディの願いを叶えてあげようといわんばかりに、最初は平気だった図書室内のすぐそこまで、もう火が回ってきていた。
「……お前の言う通り、人がひとりで生きていくには、この世界は辛いことが多すぎる。俺は、ひとりで生きていけると思っていた。ある日を境に、ひとりで生きることを決めた。でも、違ったんだ」
「違った? なにがだよ?」
「ひとりで生きていると思ってただけで、実際は違ったんだ。俺のそばにはいつも、俺をずっと気にかけてくれる執事がいたし――もうひとり、俺のことを見つけてくれたやつがいた」
フィデルは私のほうを振り返ると、小さく笑った。
「お前は本当に、今までたったひとりで生きてきたのか? 違うだろ」