転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「力を使えない? そんな状態で、のこのこ僕のとこまで来たっていうのか!? 馬鹿じゃないのか!?」
「そうよ馬鹿なのよ。馬鹿ふたりに助けられるあなたは、大馬鹿野郎ってことでいい?」
「……もう、助かる道なんてない。ここにももう火が回ってきてるのに気づいてるだろ」

 とっくに気づいてるに決まってる。さて、どう脱出しようか。絶体絶命の状況なのに、どうしてか笑える余裕がある。

 すると、大きなサイレン音が響き渡った。

「――救助だ! 救助がきたんだわ!」

 窓から外を見れば、たくさんの救助隊の姿があった。学園の消火が始まる。
 その様子を見たフィデルが、難しそうな顔をして言った。

「これだと、火が消える前に俺たちの意識が持たなそうだ」
「ちょっとフィデル、怖いこと言わないでよ。このまま業火に焼かれろっていうの?」
「そんなわけないだろ。――強行突破だ。飛び降りるぞ」

 ガラッと勢いよく窓を開けるフィデルに、コディが焦った口調で言う。

「ここは三階だ! 下手したら死ぬぞ!」
「三階だろうが四階だろうが、死ぬときは死ぬと本に書いてあった」

 なんのフォローにもならない情報を涼しい顔で言うフィデルに、コディはぽかんとしている。
 フィデルがそんな博打をするなんてめずらしいな。と思っていると、外の風景を見てピンときた。

「なるほどね。ちょうどいいところに高さのある木があるし、落ちても地面は芝生。このふたつがクッションになって、骨折くらいで済む確率は高いわ」
「そういうことだ」
「……イカレてる。僕はここに――うわっ! 放せっ! なにするんだ!」

 そうと決まれば、さっさと迫りくる炎から逃げてしまおう。
 フィデルはコディをひょいと担ぎ上げ(あの細い腕にそんな力があったなんて……)、私たちはお互い目で合図する。

「せーのっ!」

 私の掛け声と共に、図書室の窓から勢いよく飛び降りた。
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