転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 ザザザッと音を立て、木のおかげで落下速度が急激に落ちたと思ったら、ピタリと停止する。
 葉っぱや細かい木の枝にまみれながら木の一部に引っ掛かり、下に落ちることなく、なんとか一命をとりとめた。

 下を見ると、先に木から降りたのか、芝生にへたりこんでいるコディが見える。

「シエラ! 無事か!?」
「うん。今から降り――きゃあっ!」

 フィデルも無事だったことに安心していると、バランスを崩して木から落ちてしまった。

 うぅ……膝がジンジンする……。けど、あんな無茶なことをして、かすり傷で済んでいることが奇跡よね……。

「大丈夫か!?」

 フィデルがすぐに駆け寄って来て、私に手を差し伸べる。

「ありがとう。あーっ! 余裕ぶってたけど、死ぬかと思った!」

 まだ心臓がバクバクしているのを落ち着かせるように、思い切り深呼吸をしながらフィデルの手に自分の手を重ねた。

「……どうして助けたんだ。僕に、生きる意味なんてないのに」

 へたりこんだままのコディが、ぽつりと呟く。

「俺もそうだった。でも。いずれまたできる。――俺にできたように」

 コディに言うと、フィデルは手を引っ張り私を起き上がらせ、そのまま私を抱き寄せた。

「今度こそ絶対、守り抜きたい人ができた」

 フィデルはぐっと回した腕に力をこめ、思い切り私を抱き締めると、耳元で囁いた。

「フィ、フィデルっ……!?」

 どうしたらいいかわからず、腕のなかでただ顔を真っ赤にしていると、フィデルはゆっくりと腕の力を緩めた。
 私の両肩に手を置き、静かに体を離すと、熱のこもったフィデルの瞳に、私が映っている。

「――シエラが、俺の生きる意味だ」

 そう言って、フィデルは優しく微笑んだ。

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