転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 「そうだそうだ!」と、周りからもエリオットとロレッタを非難する声がやまない。

「どうして僕が拘束され、非難されるんだ! こうなるのは、フィデルのはずだったのに!」

 暴れ出すエリオットを見て、陛下がエリオットを取り押さえるよう指示する。
 ロレッタは絶望のあまり声も出ないのか、真っ青な顔をしている。立っているのもままならない様子だ。

「助けてくれてありがとう! シエラ様! フィデル様!」
「あの放送がなければ、僕たちは逃げきれていませんでした!」

 事件に巻き込まれた新入生たちが、次々と周りを取り囲み、私たちを称えた。
 涙を流しながらお礼を言われ、私ももらい泣きしそうになる。

 ――本当に、みんなが無事でよかった。

「やっぱり、異能者はすごいな!」
「これからもふたりの力があれば、国は安泰なんじゃないか!?」

 私が達成感を感じている間に、話は別の方向へと進んでいた。
 手のひらを返すように、民衆が私とフィデルの力を必要としだしたのだ。
 エリオットによって植え付けられていた、異能者は〝恐ろしい存在〟という概念が、今回の一件で覆されたのだろう。

「フィデル様とシエラ様の力があれば、怖いものなしだ!」

 そう言って、ひと際大きくなる歓声のなか、フィデルが静かに口を開いた。

「……俺にはもう、能力はない」

 小さいが、フィデルの声は確実に民衆に届いたようだった。
 歓声はピタリと止み、空気はしーんとする。

「俺の〝予知能力〟は、夜会前に見た予知を最後に、使えなくなっていたんだ。だからもう、俺は異能者でもなんでもない。普通の人間だ。この国で今、英雄と呼ぶにふさわしいものはシエラだけだ。シエラの〝千里眼〟のおかげで、人々を救うことができたのだから」

 フィデルが異能者でなくなった、という事実を突然突きつけられても、民衆は理解に苦しむだろう。
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