転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「はいはーい。盛り上がってるとこ悪いけど、まだここは危ないし、皆様は別の場所へ避難しといてもらえるかしら?」

 消火が終わったのか、救助隊を引き連れてドリスさんが入り口前に現れた。
 兵士と救助隊の誘導で、事件現場に居合わせた民衆が次々とその場を後にする。私とフィデルに、最後まで手を振りながら。

「待て! よく聞くんだ! シエラの能力を呼び覚ましたのは僕だ! この事件がシエラのお陰で解決できたというなら、シエラが異能者になるきっかけを与えた僕のお陰でもある!」

 去り行く人々に向かって、エリオットがまだなにか叫んでいる。が、その声に耳を傾けるものは誰もいなかった。

 ……エリオットも懲りないわね。この期に及んで、自分の手柄にしようなんて。呆れてため息が漏れる。
 ドリスさんの指示ですっかり人はいなくなり、この場に残っているのは、私、フィデル、エリオット、ロレッタ、ドリスさん、陛下、兵士が数人――と、物陰からこっそりこちらを伺っているニールのみだ。

「あんたたち、お手柄ね! よくやったわ!」

 ドリスさんは私に駆け寄ると、思いっきり抱き着いてきた。
 きついハグを受けたあとは、フィデルの頭を撫で満足そうに笑っている。

「すぐにニールが報告しに来てくれたんだけど、陛下や城の人間もなかなか信じてくれなくてね。私ひとりで救助隊を動かすこともできなくて、少し遅くなっちゃったの。ごめんなさい。……ほら、陛下も謝るべきじゃないんです?」
< 136 / 147 >

この作品をシェア

pagetop