転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 私たちに頭を下げてドリスさんがそう言うと、陛下はバツが悪そうに私たちのもとまで来た。だが、黙って立っているだけで、うんともすんとも発しようとはしない。そんな陛下を見て、ドリスさんは深いため息をつく。

「あの、ドリスさん……。学園は大丈夫なんですか?」

 結構燃えたみたいだし、春からまた通うことができるのかが心配だ。

「爆発が起きた半分の校舎は三階まで火が回ってたけど、思ったより爆弾の威力は小さかったみたいで被害は少なくすんだわ。再建には時間がかかるけどね。でも、あの状況でひとりも怪我人がでなかった。これはあんたたちが起こした奇跡よ」

「それならよかったです」

 ドリスさんの話を聞いて安心する。いくらいい思い出がなかったとしても、母校だもの。私にも思い入れはある。
 新入生は通う前からこんなことになってトラウマものだと思うけど……早く心の傷が回復することを願うばかりだ。

「……俺は、今回こそちゃんと、誰かを救えたんだな」

 フィデルが隣で、空を仰ぎながら呟いた。
 王妃様を救えなかったことをずっと後悔していたフィデル。誰かを救うことで、王妃様に許してもらいたかったのかもしれない。

「フィデル。ちょっといいかしら」

 そんなフィデルの考えに気づいたのか、ドリスさんが真面目な顔をしてフィデルの名前を呼んだ。
 フィデルの視線が、真っ青な空からドリスさんへと向けられる。

「ずっと思っていたんだけど……あんたの母親……フェリシテが死んだのは、自分のせいだって思ってるんじゃない?」
「……! それは……」

 胸の内を言い当てられたことを驚くような反応をするフィデルを見て、ドリスさんは疑念が確信に変わったようだった。
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