転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
――次に目が覚めると、私はまったく知らない人物に生まれ変わっていた。目に飛び込む人たちの色鮮やかな髪色、窓から見える西洋の街並み。今までとまったく違う場所だということにもすぐに気づいた。
どうやらこの世界の神様が、私の魂を間違えて自分の世界へ転生させてしまったらしい。本来なら、元の世界で成仏するはずだった悲しき女の魂を。
私はまた、新しい世界で一から人生を送らなければならなくなったのだ。前世の記憶は鮮明に覚えてはいないが、自分が女でどんな末路を辿ったかははっきりと覚えている。
第二の人生を送ることになる、新しい私の名前はシエラ・ガードナー。
立派な家柄ではなく、ただの貧乏貴族のひとり娘だ。両親は優しく、たくさんの愛を持って育ててくれたので、貧乏以外は特に家庭に不満はない。
しかし間違えて転生させたというのに、王女でもいいところの令嬢でもないなんて、神様も私に対するお詫びの気持ちはないのだろうか。転生してすぐそんなことを思っていると、神様が言っていた〝とある言葉〟を思い出した。
『あなたを、特別な女の子にしてあげよう』。
神様は、勝手にこっちの世界へ転生する羽目になった私に確かにそう言った。
シエラとして幼い頃から歳を重ねて、ずっとその意味がわからなかった――が、ある日突然、その意味がわかる日がやってきた。
『シエラ。僕の婚約者になってくれないか?』
十五歳になったばかりの頃、私はこの国の第一王子であるエリオット・バラクロフに婚約を申し込まれたのだ。
夜会で何度か顔を合わせ、数回話したことがあるだけのエリオット様が、どうして貧乏貴族の私なんかに……。
『実は……一目見たときから、君のことがずっと気になっていた』
どうやらエリオット様は、たいしてぱっとせず、派手でも地味でもない普通な私にひとめぼれをしたらしい。
みんなからモテモテで、誰がどう見てもかっこよくて、非の打ちどころのない王子様が私を……。とんだシンデレラストーリーだわ! と思っていたが、私はこのときはっとした。
神様が言っていた〝特別な女の子〟というのは、きっとこのことだ。
前世で幸せな結婚が叶わなかった私に、〝誰もが憧れる結婚〟をお詫びに用意してくれたに違いない。
私はこの世界で、今度こそ幸せを掴むために喜んでエリオット様の申し出を受け入れた。家族も私がまさか王子に選ばれるとは思っていなかったらしく、大喜びだった。
それから私は、エリオット様のご厚意で王家やお金持ちの貴族が通う学園へ共に入学させてもらい、エリオット様のそばでいろんなことを学んだ。
エリオット様に好意を寄せる令嬢たちからの嫌がらせは日常茶飯事。そして城でのスパルタ王妃教育……。楽しいことより、辛いことばかりだった気がする。
――でも、それも全部終わった。やっとすべてが報われる。